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日本人研究者の発表:健康な人の血中脂肪はNMN注射で減らすことができる

健康な人にNMN注射をすると、安全かつ効果的に血中脂肪(トリグリセリド)の量を減らし、NAD+レベルを高めることができました。

ハイライト

  • NMNの一回の注射で、血中脂肪の約75%が減少。 
  • NMN注射は体内で安全に代謝され、解毒器官である肝臓を通っていないにもかかわらず、心臓、腎臓、すい臓に何らのダメージも認められませんでした。
  • NMN注射は、血液中のNAD+レベルを20%上昇させました。

げっ歯動物の研究によると、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)サプリメントの服用によって、加齢による疾患が年齢をさかのぼった改善を示し、人体の研究ではNMNがインスリン感受性と筋肉機能を好転させると発表されました。加齢に対する潜在的な予防措置として、複数の日本国内のクリニックではNMNの静脈注射を取り入れ始めました。

 

NMNの経口投与は安全であることが実証されていましたが、NMNの静脈内注射の安全性につてはまだ証明されていませんでした。直接血液中に注射されたNMNは、体内中枢解毒器官である肝臓を迂回します。したがって肝臓で濾過されていないNMNは、心臓、すい臓、腎臓に害を与えるのではないかという懸念がありました。

 

兵庫医科大学の後藤氏と彼の同僚は『Cureus』に、NMNを注射すると、NMNは安全に代謝されるだけでなく、脂質(トリグリセリド)レベルを著しく低下させるという研究結果を発表しました。そのほかにも、NMN注射は、血液中の長寿分子ニコチンアミドアデニン二ヌクレオチド(NAD+)のレベルも驚くほど高めたのです。興味深いことに、今日まで他のどの人体での研究でも、NMNが血液中のトリグリセリドレベルを低下させるという研究結果は示されておらず、おそらくそれは経口投与での試験によるものだったからではないかと思われます。本研究では、NMNの注射による投与は、血液中のトリグリセリドレベルを低下させるだけでなく、安全に代謝されることを示しています。

 

NMN注射は血中脂質を減らしNAD+レベルを高める

NMN注射が代謝に役立つかどうかを測定するために、後藤氏と彼の同僚は健康体の10人(20〜70歳)に300 mgのNMN静脈注射をし、血液の分析をしました。NMN注射はコレステロールには何の影響も及ぼしませんでしたが、血液中のトリグリセリドでは約75%を低下させました(3時間後に~ 80 mg/dLから~ 20 mg/dLに低下)。どのNMN経口投与試験でもトリグリセリドレベルを低下させることができることは発表されていませんので、このことがNMN注射の特別な効能と言えるのではないでしょうか。トリグリセリドレベルの上昇は脂肪肝やII型糖尿病に関係してると知られていますが、NMN注射がこれらの加齢に関係した疾患を治療する有効な手段になるかもしれません。

(Kimura et al.,2022|Cureus)NMN注射は明らかに血中脂質(トリグリセリド)を著しく低下させた。トリグリセリド(TG)レベルはNMN注射後3時間で1/4程度に低下し、その後は徐々に上昇し5時間後に元の半分程度にとどまった。

 

日本の研究者は、NMNの効能で長寿に必要不可欠なNAD+分子のレベルが上昇しているかどうかを調べるため、血液中のNAD+レベルを解析してみました。彼らはNMN注射後5時間でNAD+レベルが約20%増加する結果を確認しました。ただ注射後3時間付近ではNAD+の値がやや低下する現象が見られたのですが、研究チームはその現象へのうなずける説明はしておりません。しかし、いずれにせよこれらの研究結果が、NMNにはトリグリセリドレベルを低下させるなどの効果があり、NAD+レベルの上昇はNMNの効果から発生しているのであろうことを示しています。

(Kimura et al.,2022|Cureus)NMN注射は血液中のNAD+レベルを約20%高めることができる。NMN注射2時間後、血液中の総NAD+レベルは約20%増加した。しかしなぜかNAD+レベルは3時間後に若干の低下を示し、その後再び上昇した。 

 

後藤氏と彼の同僚は、「ヒトへの300ミリグラムのNMN静脈内注射の臨床研究結果として、血液細胞、肝臓、すい臓、心臓、腎臓への悪影響は見られず、血液細胞中のNAD+の含有量は明らかに増加した」と結論づけました。

 

NMN注射は経口投与で見られない利点をもたらす可能性がある

後藤氏と彼の同僚の研究によると、NMNの静脈内注射は肝臓をバイパスしているにも関わらず、安全に代謝されることを示しました。この投与経路は、トリグリセリドレベルの低下をもたらすなど、NMNの経口投与治療では提供できない効能として認められる可能性があります。これからの研究では、筋肉の衰え、インスリンの不感受性、皮膚などの器官におけるNAD+レベルの低下など、加齢による疾患にNMN静脈注射が、どのように影響していくのかを試験をしながら調査していかなければなりません。NMN注射は、以前の臨床試験での経口投与治療では発見されなかった効能を発揮する可能性があり、さらにこれからは、NMN注射の効果を長期間にわたり検証していく必要があります。

 

ソース

Kimura S, Ichikawa M, Sugawara S, et al. (September 05, 2022) Nicotinamide Mononucleotide Is Safely Metabolized and Significantly Reduces Blood Triglyceride Levels in Healthy Individuals. Cureus 14(9): e28812. doi:10.7759/cureus.28812