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臨床試験では、NRを補充することで体組成を改善できる
Tiffany Chenより
 
身体機能の枢軸となるニコチンアミド·アデニン·ジヌクレオチド(NAD+)は、代謝反応において水の次に多く存在する分子だが、そのレベルは加齢とともに減少していく。NAD+ブースターであるニコチンアミドリボシド(NR)で動物のNAD+レベルを補充することで、健康を促進させ、さらに老化の影響を「逆転」させることができることが研究で明らかになっている。
現在、オランダの科学者グループが、ヒトにおけるNRの安全性と有効性を究明している。4月22日にアメリカ臨床栄養学雑誌 (The American Journal of Clinical Nutrition)に掲載された6週間の試験では、NRが骨格筋のNAD+代謝のマーカーを増加させ、骨格筋代謝に影響を与え、体組成の変化を誘発し、睡眠代謝率を上昇させることは示された。しかし、研究者は他の代謝健康効果が観察しなかったという。
この試験は、 長く座る生活習慣を持つ45~65歳の男女13名の少人数ゲループを対象に実施された。プラセボ対照二重盲検試験の6週間の期間、参加者に1日1,000mgのNRを服用しても副作用が示さなかった。

(Remie CME et al. 2020)

上図では、白いバーがプラセボ、黒いバーがNRを表す。脂肪量(FM)は1.33%減少したが、除脂肪量(FFM)は1.33%増加した。
NRの補充を受けて6週間後、研究チームは参加者の骨格筋でニコチン酸アデニンジヌクレオチドなどのNAD+代謝マーカーが677%顕著に増加していることを発見した。NRサプリメントはまた、筋肉の代謝に関連する化学物質であるアセチルカルニチンの運動誘発性を増強した。
動物研究では、NR補充後の代謝健康への重大な影響が示されている。しかし、ヒトへの試験では、NAD+の増加は筋肉のミトコンドリア機能の増加にはつながらず、言い換えれば、細胞の発電所の機能がNRで改善されなかったことを意味する。また、NAD+レベルの上昇も、参加者のインスリン感受性を増加させなかった。インスリン感受性が高いということは、細胞が血糖値を下げるためにグルコースをより効果的に利用していることを示している。
また、前臨床研究ではNRの補給が心血管の健康を改善することが示されているが、研究者らは心機能の改善は観察されなかったと指摘している。
しかし、研究チームは、これまで報告されていなかった参加者の体組成にいくつかの変化を発見した。参加者の体重は安定したままであったが、NRを服用した後は脂肪量の割合が減少した。一方、除脂肪量(脂肪を除いた全身の質量)の割合は、対照群よりも1.33%高かった。
NRサプリメントを摂取した後、参加者はまた、除脂肪量の増加のため、より高い睡眠代謝率を示した。この発見は除脂肪量に対するNRの効果である可能性を示唆している。より高い代謝率はまた、脂肪量の減少にもつながる可能性がある。
さらに、女性の7人に6人が体組成の変化を経験したが、男性の6人に1人しか経験しておらず、NR補充の効果に男女差があることを示唆している。研究者らは、試験の投与量と期間では、NRが参加者の代謝健康の改善に有益ではないかもしれないと疑っている。「アセチルカルニチン濃度、人間の体組成の性別の改善、代謝の健康に及ぼす長期NR補給の影響については、さらなる研究が必要です」と研究の著者は述べている。
 
 
出典
参照論文:
Carlijn M E Remie, Kay H M Roumans, Michiel P B Moonen, Niels J Connell, Bas Havekes, Julian Mevenkamp, Lucas Lindeboom, Vera H W de Wit, Tineke van de Weijer, Suzanne A B M Aarts, Esther Lutgens, Bauke V Schomakers, Hyung L Elfrink, Rubén Zapata-Pérez, Riekelt H Houtkooper, Johan Auwerx, Joris Hoeks, Vera B Schrauwen-Hinderling, Esther Phielix, Patrick Schrauwen, Nicotinamide riboside supplementation alters body composition and skeletal muscle acetylcarnitine concentrations in healthy obese humans, The American Journal of Clinical Nutrition, , nqaa072, https://doi.org/10.1093/ajcn/nqaa072.