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NMNとレスベラトロールまたはジンセノサイドの組み合わせでNAD+は相乗的に増加するとの新しい研究結果
NMNとレスベラトロールの併用はマウスの心臓と骨格筋におけるNAD+のレベルを押し上げ、
NMNとジンセノサイドとの併用はマウスの肺におけるNAD+のレベルを増幅します。
ハイライト
- NMNを単独で用いることに比べ、NMNとレスベラトロールを併用すると、心臓と筋肉のNAD+レベルをそれぞれ1.59倍と1.72倍増加させることができます。
- 肺組織において、NMNとジンセノサイドの併用はNMNを単独で用いた場合に比べて、NAD+レベルを1.97倍高めることができます。
- これらの発見は特定の器官にNAD+を増加させる新しい方法を示し、NMNが老化した心臓、肺、筋肉組織に与える影響を促進する道筋の開拓的な手法となります。
ニコチンアミドアデニン二ヌクレオチド(NAD+)前駆体のニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)と異なる化合物を結合するアンチエイジングカクテルは、一般的になってきています。異なる器官や組織で加齢くいとめるための必要不可欠な分子とみられるNAD+、この分子の作用を促進するこれらの組み合わせの影響は、不確実性に覆われています。加齢によるNAD+レベルの低下は、臓器や組織タイプによってNAD+レベルに差があるものの、多くの年齢関連疾患と関連しています。これらの考え方に沿って、個々の独立した器官をターゲットにした分子結合方式は特定の年齢関連疾患の主要な治療法となる可能性があります。
マカオ科学技術大学の江教授と同僚は『Pharmacology Research and Perspectives』に、NMNの単独使用に比べて、NMNとレスベラトロールを組み合わせて用いれば、マウスの心臓と骨格筋中のNAD+レベルを著しく高められるとの研究結果を発表しました。また、NMNとジンセノサイドを組み合わせて用いた場合も、NMN単独で使用する場合に比べ、肺組織中のNAD+レベルを2倍にすると発表しました。これらの結果は、NMN組み合わせ療法を用いて特定の器官におけるNAD+レベルを一気に高め、それによって年齢関連疾患を治療できることを指し示しています。
レスベラトロールまたはジンセノサイドとNMNの組み合わせは、特定の器官におけるNAD+レベルを高める
NMNとレスベラトロール(寿命延長に関連する抗酸化剤)が異なる器官系におけるNAD+レベルにどう相乗的影響を及ぼすかを突き止めるために、研究者は大人のマウスに、この2つの物質を経口投与しました。研究チームは、NMNとレスベラトロールを組み合わせた効果として、心臓と骨格筋のNAD+レベルが治療後6時間後には、それぞれ1.59倍と1.72倍高められることを発見したのです。これらの発見が示唆するものは、NMNとレスベラトロールの組合せ治療体制は、心臓または骨格筋に影響を与える心血管疾患や虚弱などの、年齢に関連する疾患に有効利用できる可能性があるということです。
研究チームが観察したもう一つの組み合わせはNMNとジンセノサイド(高麗人参におおく含まれている分子)です。江教授と研究チームはさらに、NMNとジンセノサイドの組合せ投与が、肺組織におけるNAD+のレベルをほぼ2倍に増やすことを発見しました。これらの結果は、NMNとジンセノサイドの組み合わせが、瘢痕組織(肺組織線維化)などの肺に関連する高齢性疾患へのテイラーメイド治療となりうる可能性を示しています。
興味深いことに、NMN単独投与では脳内のNAD+レベルは著しくは増加せず、NMNとレスベラトロールまたはNMNとジンセノサイドの組合せ投与では、治療しなかった脳内のNAD+レベルと比較して、その値を低下させる結果となりました。なぜレスベラトロールやジンセノサイドを含むNMNが脳中のNAD+レベルを低下させるのかは、まだ明確になっていません。
(Bai et al.,2022|Pharmacology Research and Perspectives)NMN組み合わせ療法が異なる器官に影響を与える。NMNとレスベラトロールの組み合わせは心臓と骨格筋中のNAD+レベルを増加させ、ジンセノサイドとの組み合わせは治療後6時間で肺におけるNAD+レベルを増加させた。
江教授と研究チームは、「我々の研究で、代謝障害レベル、特に心肺不全疾患に対する治療法として、日常的なNAD+の組合せ治療の有効性が明らかになった」と述べました。
研究者は特定の疾患へNMNと他の化合物のコンビをテーラーメードできるか?
NAD+レベルを増加させることが年齢に関連する疾患の治療に確実に有効であるならば、心血管疾患は、NMNとレスベラトロールを用いた治療の良いターゲットとなるかもしれなません。また、虚弱などの筋骨格系疾患は、同じサプリメントの組み合わせで緩和することができるかもしれません。さらに、NMNとジンセノサイドの組合せがNAD+レベルを増加させることを活用すれば、喫煙者の肺線維化を含む年齢関連肺疾患に対する有望な治療方法になる可能性があります。他の研究によると、喫煙は肺組織の線維化を招きますが、NAD+レベルを高めることでこの病気を緩和することができるます。したがってNMNとジンセノサイドを用いた治療法は喫煙者に肺の健康を提供する可能性があります。ただし、結論を出すためには、マウスモデルを用いてさらなる研究及び臨床試験を行う必要があります。
この研究を複雑化させているものは、NMNとレスベラトロールまたはジンセノサイドが摂取6時間後に脳内のNAD+レベルを低下させることが観察されたことから来ています。この影響の持続時間を見つけるためには、長期的な研究が必要となります。これらのサプリメントの組み合わせを使用した後、脳中のNAD+レベルが長期的に低下する場合、心臓、骨格筋または肺組織中のNAD+レベルの増加と、脳内のNAD+レベルの低下との間でトレードオフとなっている可能性があります。また、研究に使用された成長したマウスは比較的若いマウス(生後6〜8週)のため、これらのサプリメントの組み合わせが、年齢層に関係なく同じ器官に同じ方法でNAD+レベルを増加させることができるかどうかを研究するためにも、高齢マウスに対して試験を行う必要があります。
ソース
Bai LB, Yau LF, Tong TT, Chan WH, Zhang W, Jiang ZH. Improvement of tissue-specific distribution and biotransformation potential of nicotinamide mononucleotide in combination with ginsenosides or resveratrol. Pharmacol Res Perspect. 2022 Aug;10(4):e00986. doi: 10.1002/prp2.986. PMID: 35844164; PMCID: PMC9289528.